もともとわが国には古朝鮮の風流道があるという話を先ほどもしましたが、個人の中に「ハン」、神童、つまり神聖で無窮の宇宙が生きているという信仰がありました。みんな自分が一番だという考えです。

これは間違えばたいへんなことになるのですが、教育ですが、教育でこの個人主義をうまく管理できないか、そうすれば、個人個人の隠れた資質、創意力、大きな宇宙的能力のようなものを育てる方向へと教育改革できるのではないでしょうか。このとき、一人一人の宇宙の中に新しく創意的な自発的協同心が生まれ、新しい共同体に対する愛情、つまり、新しい秩序意識が芽生えてくるのではないでしょうか。


金芝河/キム・ジハ

「傷痕に咲いた花」

よりの抜粋・主婦とサルりム運動



「私は、男根を切られたくない一心だった」という、或る人(ヨシダ・ヨシエ氏ー故人)からの進言をふと、おもいだした。

間違った教育を信じることは、何だったのか、それは当世の流行だった。


米国の元兵士の証言によると、日本軍の強さは圧倒的だった。愛国心というのが何だったのか、今だに解明されていない。


日本人は、国のために命をかける。


あまりに圧倒的な強さに対して核を使用したのは、「当然!」だとマッカーサーに言われて、当たり前に皆が怒った。


日本人は、自分達が強かった事すら認めていない。

その強さが何だったのか、

それは・謎のままなのだ。


愛国心とは何か?


゙もしも、我々が鬼畜米英に負けたなら、男は必ず男根を斬られ、婦人は、全て必ず強姦される。


男は、男根を斬られた後、

婦人が強姦されるのを黙って見ていなければなりません。

強姦された婦人は、嫁に行けません。


第二次大戦中日本人の中でまことしやかに、都市伝説の元祖、「間違った教育」が言い触らされ、風説行脚していた。


大和魂とは一体何だったのか。



「間違った教育」を信じることは、何だったのか、それは当世の流行だった。


あなたですら年上の人の言う事を無条件で信じてしまう。


戦争に負けた後、そういう事を微塵もされなかったのは、言うまでもない。


デマを遊説したのは大日本帝国であった。大本営大日本帝国は解散した。


アメリカの音楽、JAZZ に自由を感じ、陶酔した。ウイスキーにも酔いしれた。


当然格好がつかない。

「男根切断と強姦説」

全てが嘘っぱち

間違った教育


本当にあった事は、

「阿部定事件」であった。

男根を切断されたのは吉蔵という男で、

切断したのは定という女だった。


阿部定という女性は、

男のついた嘘を、本当の事にしてくれたのだ。

情の深い、何というお人好しの女性であったのか。


坂口安吾などの、無頼派の文学者にとって砦にある菩薩像であった。

暗黒舞踏の開祖である土方巽にも影響を与えた。

戦後、大島渚監督の「愛のコリーダ」は、この阿部定事件を原作として、映画化したものだ。


阿部定は、幼少のころ、慶大生の男と仲良く遊んでいて、いつの間にか、かれに強姦されてしまった。以来、自分はお嫁に行けないという誤解をしてしまった。黙っていれば解らないものだが。伝説のようなものを、信じてしまったものだ。(中略)

彼女は、遊郭を点々とする。が、性病も患ってしまい、女郎を辞めて、女中として石田吉蔵という男の家に入ったところ、

またもや、この男に強姦されてしまった。その後も石田の家に通い続けた、

他に女性の出来る仕事は無かった。

男は、厳し過ぎる軍隊訓練で、自己を喪失していた。

情交の関係になった、石田には妻と息子がいた。妻から、「あの人は気を付けた方がいい」と、言われた。不倫を繰り返す男だったのだ。


その後、阿部定は、石田吉蔵と供に、家を抜け出して、旅館に泊まり込み、ひたすら情事にふけった。旅館代、酒代は底をつき、そこで石田は家に戻り、妻と息子の家にある金銭を全て強奪して、定の元に帰って来たのだ。


定は、「あんたが他の女のものになるのなら、いっそ殺してしまいたい」

と話するようになっていき、常軌を逸してきた。


それは、後々に現実の事になるのだ。


定は、情事の最中に石田吉蔵の首を締めていた。石田は、「お前の思い通りにしてくれ、やるんなら途中で止めないでくれ、苦しいから」等と言っていた。


不倫関係の故、定はどうしても吉蔵を自分のものに出来ない故、、男根を切断して、それを自分のものにしたくなった。


結局、帯で首を締めて殺し、隠し持っていた刃物で切断した。現場は、血の海だったが、阿部定は現場に「定吉二人きり」と血文字を残した。定と吉蔵の名前が一つになっているのに過ぎないが!・・・・



阿部定は、警察が血眼になって探している処へ行き「それは私です」と言って名乗り出た。定は、血にまみれた吉蔵の下着を身につけていた、それを証拠として逮捕された。それを取り上げようとすると、「それは、私のです」と取り上げを拒んだということだ。


そしてそして、私は逮捕されました。


定は、私の愛する人がとうとう自分のものになった事に酔いしれ。喜んで逮捕された。


愛したばっかりに。

そそっかしい、ついうっかり、

情の深い、面白い話として、一斉を風靡した。

美しいばっかりに、女優のように高い人気を博した女性受刑者。


「何という情の深い女だ」と、世間の紳士達の熱情を駆り立て、山のようなファンレターや結婚の申込みの手紙が、定の服役していた刑務所に届いた。服役を終えてから、坂戸市に料理屋を開いた。


そこに坂口安吾、土方巽等が通った。

文学者坂口安吾氏が阿部定に言った言葉は、「あなたは間違っていない」

それは、軍事訓練の苛酷だった事、いたずらに鍛えられ、いたずらに殴られ、常に半死半生の目に逢う。死ね!と

教えられ続け、自己意識等なにも無い。精神の崩壊状態、それが当たり前。私の亡くなった父の証言によると上官が、食物を横取りし、一兵卒は、御飯一膳と、具の入ってない味噌汁だけしか食べらない。上官が美味しいものをひたすら独占していたため、体力差が有り。

一兵卒はひたすら殴られていた。

その兵隊一個師団は、その後、飢餓の戦場「ガダルカナル」へと向かった。私の父だけが、病気の故、生き残った。


戦時中の処々の衆罪、皆合い代わって謝る


愛のコリーダと供に「肉弾」(岡元喜八監督)等も見て下さい。





イラスト:丸木位里